フォルクスワーゲンが起こした排ガス問題。
その悪質性から、巨額な損害額が試算されていて、倒産の可能性すら言及されています。
そこで、この記事では、
などについてお伝えします。
フォルクスワーゲンの排ガス問題はなぜ発覚?
ドイツの大手自動車会社、フォルクスワーゲン(VW)の一部ディーゼル車について、不正を行い、アメリカの排ガス規制を逃れていた問題が発覚しました。
また、アメリカだけではなく、ヨーロッパでも行っていたことも、相次いで判明しました。
損失は、
- 米当局への最大2兆円を超えるの制裁金
- 各国当局への制裁金
- 集団訴訟
などを含め損害額は相当なものです。
(この点については、後ほど具体的な数値をあげていきますね)
会長も引責辞任し、ブランドとしての信用もゼロになっていまったフォルクスワーゲン。
今回、このような問題が発覚したきっかけというのは、「国際クリーン交通委員会」の委託を受けて、アメリカのウエストバージニア大学が行った調査でした。
「国際クリーン交通委員会」は世界各地で活動している環境関連のNPO団体です。
その調査は、2013年から去年まで、フォルクスワーゲンの「ジェッタ」と「パサート」、それにBMWのディーゼル車3車種に対して行われました。
調査では高速道路や市街地、登り坂などを走行して排ガスの数値を測定しました。
そして、BMWの方は大体、基準値だったんですが、問題になったのがフォルクスワーゲンの2車種。
- 「ジェッタ」の方は、窒素酸化物の排出量が基準の15倍~35倍。
- 「パサート」は基準の5倍~20倍だったんです。
さすがに、これはひどい数字ですよね!
この結果をアメリカの環境保護庁とカリフォルニア大気資源委員会に報告したところ、リコール騒動になり、フォルクスワーゲンは2014年12月にリコール改修を開始しました。
しかし、その後も排ガスが改善されていないことがカリフォルニアの検査機関で発覚し、最終的にフォルクスワーゲンの不正ソフトの存在が発覚したんです。
対象車種は?
今回の排ガス問題、不正があったのはフォルクスワーゲンと、その傘下のアウディが使っていた直列4気筒ターボディーゼル「TDI」エンジン。
そして、該当するのが2009年から2015年に発売されたフォルクスワーゲンの
- ジェッタ
- ゴルフ
- ビートル
そしてアウディの
- A3
さらに、2014年から2015年に発売された
- バサート
の合計5車種になります。
アメリカ、ヨーロッパ含めて、対象となる車は1100万台になるとのこと!!
凄い数です・・・。
これは、フォルクスワーゲン、本当にヤバいですね・・・。
自動車業界だけではなく、世界経済全体に影響を与えたフォルクスワーゲンの排ガス問題。
基準の間違いや、記述ミスなどではなく、不正ソフトを搭載させるという悪質なものでした。
不正ソフトの裏側について!
つまり、今回の排ガス問題が悪質だと言われている理由は、わざわざ不正なソフトを導入し、テストを欺こうとしたこの点です。
不正があったエンジンのソフトウエアには「defeat device」というプログラムが入っていました。
このプログラムは、
- ステアリングの位置やホイールの位置
- エンジンの回転数
- 車速吸気圧
などから、今が通常走行中なのか排ガス試験中なのか分かるようになっています。
そして、
- 排ガス試験中と判断したら有害物質を取り除く排ガス低減装置をフル稼働
- 通常走行中と判断したら排ガス低減装置の一部もしくは全部を無効化
させ、エンジン性能を最大化していたのです。
これは意図があまりに明確すぎて、誤魔化しようがないですよね・・・。
そういったプログラム開発への熱意を、他のところへ向ければよかったのに・・・。
フォルクスワーゲンの倒産の可能性とドイツ経済への影響
先ほど書いた通り、今回の排ガス問題は世界1100万台を対象にしたもの。
ですから、その損害額も、物凄いものになっています。
損失に関して、もう少し具体的な数値をあげるとこのような感じです。
- 対象車両の回収や無償修理費用には65億ユーロ(約8664億円)
- 米環境保護局による制裁金は最高で180億ドル(約2兆1584億円)
この他にも、米国各州や世界各国に制裁金を払う必要が出てくるでしょう。
その他に、不正で車の価値が損なわれたことに対して、すでに30を超える損害賠償を求める訴訟が起こされているようです。
このままだと、大規模な集団訴訟に発展する可能性もあり、損害賠償額は膨れ上がるでしょう。
また、重大な影響を受けているのが「株価」です。
今回の不正発覚をうけ、フォルクスワーゲンの株価は、時価総額で2兆円が吹っ飛びました!
ここまで来るとフォルクスワーゲンの倒産もチラついてきますよね。
合計で10兆円規模になると言われている損害額は時価総額7兆円よりも多く、これでは倒産するしかなくなります。
しかし、果たしてそうなるでしょうか?
ドイツ経済への影響。そこから倒産の可能性を考えると・・・
フォルクスワーゲンを倒産させると、ドイツ経済への影響はかなり大きくなってしまいます。
VWはドイツ最大の自動車メーカーですから、雇用は国内だけでも27万人を超えています。
もちろん、下請けなどの部品納入業者もいるので、VW関係者はもっと多くいます。
昨年のドイツの自動車産業全体の労働者数は77万5000人ですから、その割合は凄いですよね!
また、輸出という面で見ても、ドイツは自動車・自動車部品は最重要項目です。
輸出額は2000億ユーロ(2250億ドル)で、全輸出の約5分の1を占めていますからね。
このような主幹産業とも言えるドイツにとっての自動車産業、そして、ドイツ最大の自動車メーカーVWをそう簡単に潰すわけにはいかないでしょう。
実際、INGのチーフエコノミストのカルステン・ブルゼスキは現段階で
「突如としてVWはドイツ経済にとってギリシャ債務危機を凌ぐ下振れリスクになった」
とコメントしています。
さらに、
「VWの北米での売上高が今後数カ月で落ち込めば、その影響はVWだけにとどまらずドイツ経済全体に及ぶだろう」
とまで言っています。
もっともな話です。
しかし、フォルクスワーゲンを潰さないためには、まず、アメリカからの制裁金を軽減させる必要があります。
VWは手持ちで210億ユーロ(240億ドル)のキャッシュを持っていますから、たとえ最高額の180億ドルになっても払うことは可能です。
ただ、そうなった場合、EUやその他の国でも、その水準での制裁金となってしまいますし、経営を圧迫するのは間違いありません。
となってくると・・・。
国同士の働きかけや、「貸し」を作るために、アメリカが制裁金を軽減する可能性は十分にあると思います。
また、今回の問題、ドイツの外交官らが、重大な抜け穴が存在する排ガス試験を継続することを裏で働きかけていたことも発覚しています。
となると、これは国ぐるみでやっていたという話にもなりかねない(?)わけで・・・。
いや、仮にそれが言い過ぎだとしても、ここまでの影響を考えると、問題の収束にも国が関与してくる可能性は大いにあります。
もし、アメリカの低くなった制裁金にならって、EUの制裁金も低くなれば、さらに、状況はマシになるでしょうから。
このような指摘も・・・
ちなみに、このような指摘もあります。
他にも、VWにとって重要なのは、アメリカでの売り上げを落とさないこと。
そのために必要となるのが「生贄」の存在です。
例えば、アメリカのGM社のスイッチの問題で、訴訟や制裁金が発生した時は、タカタ製のエアバッグ問題でホンダが、かなり叩かれました。
このように、矛先を変え、早期に問題を収束する・・・なんてことがあるのでは?という指摘です。
話題の規模が大きいだけにどうかはわかりませんが、「そういえば確かにそんなことがあった・・・」と思ってしまう指摘ですよね。
日本への影響、マツダやトヨタの株価などについて
さて。話を日本へ移しましょう。
今回のフォルクスワーゲンの問題、もちろん、日本にも影響があります。
「生け贄」の可能性・・・?
まず、上記の「生贄」の問題。
もし、その方向で舵を取るのなら、標的はアメリカの自動車会社になるはずがありませんし、欧米の自動車会社も考えにくい。
したがって、ターゲットが日本の自動車会社になる可能性が高いと言えます・・・。
トヨタがアメリカで叩かれたのを記憶している人も多いことでしょう。
排ガス検査への対応
また、今回の問題でアメリカが排ガスの検査を強化すると発表しました。
当然、これは日本のメーカーも対応しなければなりません。
端的な言い方をすると、真面目にやっていた会社にも、対応のためのコストが生まれてしまう・・・というわけですね。
日本メーカーで特に影響を受けそうなのはどこ?
今回の問題で日本メーカーで最もきつい立場になりそうなのがマツダ。
じつは、マツダはデミオなどでディーゼルエンジン搭載車を増やし、攻勢をしかけようとしていた矢先だったのです。
そのため、今回のVWの問題は、マツダにとってもマイナス要因と捉えられ、株価は下落気味になっています。
また、日本一の自動車メーカー・トヨタも当然、影響を受けます。
トヨタはVWと世界販売台数1位を争うライバルですので。
まず、VWの売り上げは落ち込むことで、トヨタが1位になる可能性は高いです。
ただ、1位になればいいのかというと、そこは微妙なんです。
例えば、トヨタ叩きが行われたの世界1位の時ですし、簡単に言えば、目をつけられる可能性が高くなるんですよね。
トヨタとしては2位で粛々と行っていた方が・・・なんてことも考えられます。
もうひとつ、VW問題で話題となっている日本の自動車メーカーがあります。
それは、スズキです。
スズキはVWと2009年に包括的提携を結んでおり、日本のメーカーの中で、VWと最も密接と言って良いメーカーです。
しかし、今年の8月30日に提携を解消し、VWが保有する株、19.9%も取り戻していたのです。
これはホント危なかったですよね。
ただ、事実関係的にはどちらが先だったのかは微妙なところです。
元々、提携はスズキの軽自動車のノウハウと、VWのディーゼルエンジン技術の技術交換が目的だったと言われています。
それにも関わらずスズキは2011年にイタリアのフィアットからディーゼルエンジンの技術を購入することを決めました。
この流れと今回の事件を見ると、VWにクリーンディーゼルの技術が無かったためフィアットと提携し、VWを見限ったと言う流れが正しいような気もします。
いずれにせよ、スズキにとってはギリギリで難を逃れた、素晴らしい選択でしたね。
株価への影響
株価的には、自動車産業が全体的に不安視されて、下落傾向にあります。
日本メーカーも同じくという傾向のようですね。
以上のように、様々な影響を世界中に与えている今回のVWの排ガス問題。
これから、フォルクスワーゲンは、損害や信用の低下などに直面し、苦難の日々・・・となるかもしれません。
自業自得と言えばそれまでですが、昔の信用を取り戻せるまで、頑張ってもらいたいですね。
以上、「VW排ガス問題で倒産の可能性!ドイツ経済やマツダやトヨタの株価への影響は?」をお送りしました。
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