高倉健さんがお亡くなりになったという衝撃のニュース。
しかも、次回作を準備中だったらしいんですね。
その中で体調を崩して入院し、治療を受けましたが・・・。
病院で健さんの姿を見たという話も聞きましたが、お亡くなりになるとは・・・。
本来ならば、準備中だった次回作が見たいのが本音です。
ただ、この記事では結果的に遺作となった映画「あなたへ・・・」のあらすじとそれにまつわるエピソードを。
そして、感動のネタバレについてもご紹介します。
高倉健の遺作「あなたへ」とは
高倉健の遺作「あなたへ」は2012年の作品。
高倉健の6年ぶりの映画復帰作、そして実に205本目の出演作でした。
そこそもが前作となる2006年中国映画「単騎、千里を走る。」で、高倉健の心を動かすエピソードがあったらしいんです。
実は、この映画が終わった後、撮影スタッフが泣きながら抱き合う姿、そして自分にも泣きながら抱きついてくる姿に触れて感じることがあったらしいですね。
現場の様子は
撮影がクランクアップし高倉氏を見送る際、70~80人のスタッフが皆涙を流した。
こんな場面は今まで見たことがない。
と同作品のチャン・イーモウ監督が語るくらいのもの。
そして、高倉健は、
お金じゃない何かがあった。
あれは何だったのか、とずっと考えていました。
仕事が出来なくなりました
と語っています。
そして、その後、映画やCMへの出演を、健さんは実際に断っていました。
このあたり、「不器用」な高倉健らしい気もしますね。
しかし、このように語り、6年ぶりの映画「あなたへ…」への出演を決めたわけです。
でも、長年一緒に仕事をしてきた降旗康男監督と、もう一本やっておきたくて。
監督も僕も、人生の大事なことに気がついたというか
この発言からは、健さんも遺作となる覚悟、ある意味集大成として取り組んだ作品だったのでは?と感じられます。
映画「あなたへ」のあらすじ
高倉健が演じるのは、富山の刑務所で指導教官を務める倉島英二。
とてもダンディーな役です。
英二は、妻を亡くしています。
実は、この妻は獄中で死亡した受刑者の元妻。
少々、複雑な関係ではあります。
その亡くなった妻・洋子(田中裕子)からある日、絵手紙が届きます。
一通には「ありがとう」。
そして、もう一通には「(自分の骨は)故郷の海に散骨してほしい」と記されていました。
そこには英二もまったく知らなかった妻・洋子の想い。
一体、妻・洋子はどんな思いでこう書いたのか?
その思いを確かめるために、英二は故郷へ向けて車での一人旅をはじめます。
富山から旅に出た英二は、飛騨高山や京都、瀬戸内・北九州・門司を通り、洋子の故郷の長崎県平戸の漁港・薄香へと旅を続けます。
そして、それぞれの土地でさまざまな人々と出会うなかで、英二は洋子の深い愛情に気づいていきます。
しかし・・・
映画「あなたへ」のネタバレ
洋子の深い思いとは・・・
高倉健さんらしく、基本的には寡黙な主人公・英二。
英二が洋子の思いをどのように受け止めたかは、その行動から解釈するしかありません。
ここに関しては、妻の心のなかにはやはり消えることのな元の夫への思いがあったんだ・・・。
そういう解釈も成り立つわけですが、ここはやはり「あなたには自分の道を歩んで欲しい」という思いを受け取った。
そういう風に解釈したいと思います。
そう思わせるのは、「あなたにはあなたの時間がある」という妻・洋子の言葉。
受刑者の妻という立場の自分と結婚し、そして自分の苦しみをいっしょに担い続けてくれた夫・英二に対する感謝がそこにはあります。
そして、自分が死んだ後も何かきっかけがなければ、その生き方を変えることはしないであろう。
これからも、自分ではなく他者のために生きることを優先し続けるだろう。
おそらく、妻・洋子はそのように思っていたからこそ、一つ仕掛けを施します。
それが、自分の故郷・薄香で自分からの手紙を受け取るようにしたこと。
洋子は、
- 自分が散骨を望んでいる場所まで足を運んでもらわなければ
- その過程を遺骨となった自分と過ごす時間がなければ
「きっと夫は自分を散骨することはないだろう」。
そんな風に思っていたんだと思います。
実際、散骨のシーンが近づいたところで、大滝秀治演じる漁師の大浦に英二は「散骨への迷いがあること」を指摘されています。
妻は最初から、英二が迷うだろうことを見抜いていたんですね。
だからこそ、わざわざ自分の故郷で手紙を受け取らせたわけです。
なぜ南原という人物が必要だったか
そして、妻の「あなたにはあなたの時間を生きて欲しい」という願いが実るためには、もう一つの仕掛けが必要でした。
ただ、これは妻・洋子が準備をしたものではありません。
ここで現れるのが佐藤浩市演じる南原なる人物です。
詳しいネタバレはここでは省きますが、南原はとある事情で妻子と別れ、「死んだことになっている」人間です。
実は保険金のために、「海難事故にあったことになっている」人間なんですね。
そして、妻・洋子の故郷で南原の妻と娘と英二は出会います。
(この出会いがなければ、散骨はうまくいきません)
そして、南原の妻は散骨のため海に出る英二に、花束を娘・奈緒子のウェディング姿の写真を手渡し、こう言います。
海に流してください。あの人にも分るように
英二は花束は海に流しますが、写真はそっと持ち帰ります。
そして、次に南原と会った時に、この写真を渡すんですね。
・・・南原の妻の思いに、ちゃんと気づいていたんです。
この行為が、彼にとって何を意味するか。
刑務官として生きた彼にとって、これは必ずしも許される行動ではない。
だからこそ、英二は散骨のため海へ出る前に、退職届を投函します。
これが、英二にとっての大きな過去との決別となっているわけです。
愛する妻子のために罪をおかした男。
刑務官の立場からは簡単には認められない存在です。
そして、その男とは異なる人生を歩みながらも、その男を思い続ける女。
そこには自身の妻・洋子とオーバーラップするものがあったかもしれません。
その二人を結びつけること。
英二自身もこう言っています。
刑務所では外部の人間に情報を流すことを『鳩を飛ばす』と言います。
自分の今やっていることは、まさしく鳩を飛ばすことです
こうして、英二は今までの生き方とけじめをつけることになったわけなんですね。
英二は、途中で生前の妻がこういうシーンを回想しています。
秋になったら忘れずに外さなきゃね。
季節はずれの風鈴ほど悲しい音はないもの
ここにも、妻の深い思いが込められていたことに英二は気づくんです。
この映画、ちょうど「黄色い幸せのハンカチ」と合わせ鏡のようになっている映画に感じられます。
そして、単純に何回もの鑑賞ができてしまう作品だと思います。
高倉健さんが語った「人生の大事なこと」をここから感じ取りたいものです。
以上、「高倉健の遺作「あなたへ」のあらすじ!感動のネタバレ解説も」でした。