シングルカットされた曲っていうのはアルバムに収録されている曲よりもメジャーになるものです。
特に、ドラマのタイアップになった曲というのは更に色んな人に聞いて貰えますよね。
フジテレビ系のドラマ『ブザービート』の主題歌にもなった『イチブトゼンブ』。
最近ではライブでも演奏される定番曲になりましたね。
この曲、本当に『愛』をつきつめた歌詞になっているんですよ。
ということで今回は、『イチブトゼンブ』の歌詞について、個人的な考察をご紹介します。
イチブトゼンブが登場すると・・・
ライブでは『イチブトゼンブ』を演奏されることも多くなりました。
イントロが始まると稲葉さんがピョンピョン跳ねながら手拍子をしてくれます。
なのでこっちも腕を上げて手拍子を始めるんですよね。
ワクワクする曲の1つでもあります。
そんな『イチブトゼンブ』、ライブで初披露されたのはB'z LIVE-GYM2010"Ain't No Magic"でした。
大トリの曲ということで、盛り上がりは最高潮でしたね。
しかも、バラードバージョンからの・・・ということで、本当に最高です。
『イチブトゼンブ』は究極の愛
MVも廃車場(?)のようなところで歌っている2人。
こんなにも『愛』を歌っている歌なのに、このかっこよさはなんなんだ・・・と思ったものです。
イントロ開けは休符と共に・・・
イントロが明けると一拍分の休符があります。
ここ、稲葉さんの呼吸する音が聞こえてきそうでこっちまで息を呑んでしまうポイントなんですよね。
そんな休符を抜けるとこれまたインパクトバッチリな稲葉さんの言葉。
『アナタは私のほんのイチブしか知らない。』
この歌詞は、「」で括られていてセリフになっているんですよね。
つまり、付き合っている彼女が放った言葉だということです。
しかもこの言葉を『勝ち誇るように笑われて』言われてるんですよね。
だけど、そんな言葉を言われても、この歌の主人公は全く『イヤだ』と思っていないというところ。
しかも、そんなことを言い出す彼女の声は『生まれてくる前』から『聞いたような深い声』だと言っているんです。
もちろん生まれる前の記憶を持っているという人はいないでしょう。
私はこれまでそんな人に出会ったことがありません。
そしてタイアップしている『ブザービート』もそういった物語ではありません。
だけどここでは生まれてくる前から聞いていたような声だと言っているんです。
何が言いたいのかというと、彼女の声は本当に自分にすんなりと入ってきて、『嫌だな』なんて思うところは全くない、ということなんですよね。
それは自分が好きな彼女の声だからこそ起こる現象で。
彼女の声を聞けるのなら『人生のオカズ』になれるとさえも言っているんです。
ということは、彼女の存在、それこそが主人公にとっての生きる糧なんですよ、ということなんです。
1サビで大切なこと全てを歌っている
彼女こそ全て!という主人公。
それだけで良いのに、と思いながらも
『あくまでなんでも征服したがる カンペキを追い求め』
と、相手の全てを知ろうともがくということなんですよね。
しかもこれは主人公だけではなく、
『アナタは私のほんのイチブしか知らない。』
と言った彼女もまたそうなんですよね。
そしてここでバックコーラスが入るんですが、それが『血眼で』と。
相手のことを全部知ろう!全部知りたい!!といつまでも自分の知らない部分を探し続けようとしている。
でも
『すべて知るのは到底無理なのに』
とも分かっているんですよね。
それでも相手のことを全て知りたい!という欲求をお互いに押さえることができない。
全部知らなくたって
『愛しぬけるポイントがひとつありゃいいのに』
ということもわかってるんだけど・・・、と言った感じ。
理想と現実ってこういう感じですよね。
何が理想かということはわかってる。
だけどその理想に行くためには、たゆまぬ努力が必要。
理想に近づきたいけど、結局はこんな風な現実になっちゃうというちょっと切ない系ですね(^^)
2メロではこんなこと言われたい!と強く願う
タイトルからして私の願望がだだ漏れですが、2メロは本当に「いいなあ」と指をくわえてしまうレベル。
最初から『ほんのイチブ』という部分を1メロとあわせている所もすごいなあと思います。
しかも、2メロは彼女の最初のセリフに対する主人公のアンサーですよね。
『もしそれが君のほんのイチブだとしても』
と彼女の言葉を受けています。
その上で
『何よりも確実にはっきり好きなところなんだ』
と告白しています。
2人で向き合っているときにこんなこと好きな人から言われたらそりゃこころ打ち抜かれますよ。
自分が彼女の「イチブ」しか知らないとしたとしても、その知ってるところが「何よりも確実にはっきり」好きなんですよ?
「アナタ、私のことイチブしか知らないでしょ?!」
と彼女に言われて
「そんなことない、全部わかってるよ。」
なんて言われるより
「そうかもしれないね、でもそのイチブだったとしても僕の好きな君には変わりないよ。」
って言われた方が嬉しくないですか?
しかも歌詞ではバックコーラスで
『何が何でも』
と言ってくれるんですよね。
彼女にとっては自分の嫌いな部分かもしれない。
それでも自分にとっては何よりも大好きなポイントなんだよという思いを感じます。
そして主人公は
『抱き寄せるとホッとするような柔らかさだったり』
と続けています。
大好きな人を抱き寄せてホッとすることができるって大切なことですよね。
一緒にいるだけで安らぎを感じているんですから。
これほど大切なことってないですよ。
2サビは強い決意を感じる
1サビでは理想と現実の違い(?)を痛感しています。
そして2サビでは
『すべて掴んだつもりになればまた傷つくだろう』
と言っています。
自分の大好きな彼女のことを「絶対全部知っている!」と思いこんでいれば、やっぱり傷つくこともありますよね。
自分の知っていない彼女が出てきた時にそのギャップを感じるかもしれないし。
知らないこと(隠していたこと)があったんだ・・・と身勝手に傷ついてしまうかもしれない。
だからそんな相手のことを知っているとかそういう認識は必要ないんだよ。
『ほんとに要るのは有無を言わせない 圧倒的な手ざわり』
だけとも。
自分の前に大切な人がいる。
そしてその大切な人は自分の手の届く場所にいる、それだけで十分でしょ!と言っているようにも聞こえます。
そう
『愛しぬけるポイントがひとつありゃいいのに』
なんですよね。
間奏開けのメロにこの曲の『格』がある
間奏を挟んでやってくるメロ。
最後のサビへ繋ぐ言葉でもありますね。
ここでは
『君にしかわからないこと 僕だけが見えていること どれもホントのこと』
と言っているんですよね。
とても短い言葉ではありますが、これこそこの曲の『格』になる言葉だと思います。
相手を見た時に、自分の事を相手からしか見えないこと、そして自分だからこそ分かっていること。
そのどっちも自分としてホントのことなんですよね。
自分から見たら好きじゃないところでも、相手からしたら酷く愛しいポイントかもしれない。
その逆も然り、です。
だからこそ
「全部、知ろうとするのは無理なんだよね。愛しぬけるポイントがひとつでもあれば大丈夫。」
という心理になるんです。
最後のサビではこれからの2人を応援している
最後では
『すべて何かのイチブってことに 僕らは気付かない』
とのこと。
これは恋愛だけではないですよね。
ありとあらゆることに関して、必ず何かのイチブになっています。
そしてそれは意識した瞬間にしか気付かないとも。
もしイチブだとしても、それが自分にとって愛しいと感じる事ができる理由であるのならそれを見失わないようにして欲しいと願っています。
これはドラマで言えば、思いが通じあった2人へのエールのようにも感じることができます。
『ブザービート』は主人公の山Pと北川景子ちゃんが想いを通じ合わせハッピーエンドで終わります。
この先も、お互いに愛しぬけるポイントが1つでもあればそれだけでずっと思い合うことができるよ、と。
そんな風に言っているんじゃないでしょうか。
その愛しいポイントを失って気付くなんてことのないようにね。とも。
これは「恋」というより「愛」に近づいて行く2人のことを表現しているようにも感じましたね。
『イチブトゼンブ』は”愛”
『イチブトゼンブ』というタイトルは皆さんおわかりの通り、真反対の言葉を組み合わせています。
だけど歌の中でも言っているように、イチブってゼンブの中に組み込まれているということなんですよね。
イチブがたくさん集まってゼンブになっていく。
「愛しぬけるポイント」が今はひとつかもしれないけど、長い時間一緒にいればそのポイントが増えていっていつかはゼンブに近づけるかもしれないよ、と言ってるんじゃないかと思いました。
元々、稲葉さんは稲葉さんの中での恋愛観というものを色んなところで話されていますよね。
それを思い返してみると、この歌の歌詞というのはしっくりくる「愛」の歌なんですよね。
『愛しぬけるポイントがひとつありゃいいのに』
と言っているけど、そう言えばあの歌では全く反対のことを言ってた!
どうなってんだ?!と思いましたので、今度はその歌との比較を検討していきたいと思います。
『今夜月の見える丘に』と『イチブトゼンブ』
言わずもがな、最高の恋愛ソングである『今夜月の見える丘に』です。
この曲もTBS系のドラマ『ビューティフルライフ』のタイアップ曲として広く知られました。
『今夜月の見える丘に』の歌詞についてはこちらの記事で詳しく考察しておりますので、あわせてどうぞ。
こうみると
- 今夜月の見える丘に→あなたのことが全部知りたいよ
- イチブトゼンブ→イチブだけ知って愛することができれば十分
という心情を表現していますよね。
あ、あれ?
真反対。
なんですが、一見真反対に思えるようなこの2つの歌詞も、全く反対ではないんですよ。
稲葉さんの恋愛観
以前、稲葉さんは『ミュージックステーション』に出演した時に
「女の子から積極的に行く恋愛はダメなんでしょうか?」
という質問に対し
「恋ですから、相手のことを考えずに突っ走っていくぐらいで良いんじゃないでしょうか。」
というようなことをおっしゃっていました。
(うろ覚えですみません)
この言葉を聞いた時に、稲葉さんってすごくリアリストなんだなあとも思ったものです。
良く、『恋とは?愛とは?』という質問がありますよね。
2つの違いを・・・的な。
この2つの違いこそが『今夜月の見える丘に』と『イチブトゼンブ』には表れているんじゃないかと思うんですよ。
『今夜月の見える丘に』は”恋”
『今夜月の見える丘に』は
「君の気持の欠片が分かるまで寝ない!」
と宣言しているほど迷っている主人公です。
この気持ちって、恋をした時の感情ですよね。
相手の気持ちを知りたくて、本当にどう思っているのか不安になってしまう。
そんな不安定な状態こそが『恋』でもあります。
だからこそ、
『どうにかして君の中入っていって』
なんですよね。
相手のことが知りたい!
全部知りたい!と思うのは恋愛の中の”恋”の部分。
一方で『イチブトゼンブ』では相手のことを全部知らなくても、自分が愛しいと思えるポイントが1つあればいいんだよ。
それだけでいいんだよ、という恋愛の中の”愛”の部分を表しているんじゃと思います。
全く別のことを歌っているんだから歌詞も真反対になってしまいますよね。
でもこれ、『今夜月の見える丘に』の延長線上に『イチブトゼンブ』があると考えるとどうでしょうか?
全部を理解し合えないともがいていた2人が、それでも愛しぬけるポイントを見つけて、続いて行く。
この2つの曲を通して『恋から愛』に変わっていく心情を感じ取ることができるんではないでしょうか?
相手のゼンブを知ろうとすることは決して悪いことではない
『イチブトゼンブ』という曲は、相手のイチブしか理解できていなくたって、それだけで十分ですよ、というメッセージを含んだものです。
この曲に登場してくる彼女は
「アナタは私のほんのイチブしかしらない」
とドヤ顔(勝ち誇るように笑う)で言っています。
彼女からすると「私のゼンブを知って欲しい」という心の裏返しの言葉だったのかもしれません。
確かに相手のゼンブを知りたいと思うのは、恋愛中の2人にとって大切なこと。
でも、そこばかりに注力してしまうと大切な2人の関係を壊しちゃうかもしれないよ、という大事なことに気付かせてくれるものでもあります。
この駆け引きは本当に難しい。
でも”恋”という感情が”愛”に変わることで「イチブでも十分!」と思えるようになるんだよと。
そして最初に彼女に対して感じた「好きだな」というポイントを失わなければ、大切な彼女という存在も失うはずがないんですよ、とも。
とてつもなく大きな愛を感じます。
まだ聞いたことない、という人は是非!
そのうち、「お気に入りの曲」になっているかもしれませんよ。
以上「B'z(ビーズ)のイチブトゼンブの歌詞の意味とは?考察から見える稲葉浩志の恋愛観」をお送りしました。