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小説「鹿の王」のあらすじ・感想や心に残る名言!ヴァンのその後についても考察

ファンタジーはあまり好きではない私。
それでも前々から気になっていて、ようやく目を通した作品があります。

それが「鹿の王」です。
2015年の本屋大賞を受賞した、上橋菜穂子さんの作品です。

読んでみたところ、とっても大切なことをたくさん教えてくれる作品だったんですよ。

今回は、『鹿の王』の

  • 感想
  • あらすじ
  • ヴァンのその後
  • 心に残った名言

についてご紹介していきたいと思います。

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『鹿の王』のあらすじ

まずは、ちょこっとだけあらすじをご紹介したいと思います。
実はこの作品、映画作品としても公開されていたんですね。

この作品の主人公は、2人の男性です。
1人はヴァンといいます。

独角(どっかく)という集団の頭を務めていた男でしたが、帝国の侵攻によってとらえられ、岩塩鉱で捕虜として働かされていました。
その岩塩鉱にある夜、謎の獣が襲撃し、ヴァンは死にかけるのです。

他の捕虜は全員、獣にかまれ死んでしまいますが、ヴァンだけ生き残ります。
その日、生き残りはもう1人いました。

それは言葉も通じない女児。
まだ年端もいかない少女に「ユナ」と名付けたヴァンは2人で生きていくことを決めるのです。

そしてもう1人は世界に広がる謎の病を食い止めようと奮闘しているホッサル。
ホッサルは東乎瑠(ツオル)帝国で医術師をしています。

謎の獣にかまれて死に至る病。
その原因究明のために岩塩鉱を訪れます。

そこで獣にかまれているにも関わらず、脱走防止の足かせが1つ壊されていることに気付きます。
獣にかまれているのに生き延びている人間がいること。

このことでヴァンが、病の原因をひも解くカギになると感じたホッサルはヴァンを追いかけることになるのです。

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「鹿の王」の読む順番は?

『鹿の王』はハードカバーと文庫版と2種類出ています。

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ハードカバーは上下巻。
文庫版は1~4巻まで出ています。

そしてこの他にも、

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「水底の橋」という作品も出ています。

読む順番は
『鹿の王1~4』もしくは『鹿の王 上下巻』を読んだ後、『鹿の王 水底の橋』という順番が良いかと思います。

というのも、『水底の橋』は本編から少し時間がたった話だからです。

こちらを先に読んでしまうと本編のネタバレ・・・になてしまったり、
「ん?どいうこと??」という感じになってしまうからかもしれないのです。

まずは本編を読んで最後に『鹿の王 水底の橋』を読むのが良いですね。

『鹿の王』の感想

読んでみた感想ですが、本当に面白い。
この一言に尽きます。

ファンタジーって本当に面白いんだな、と感じました。
作品の中心にあるのは謎の獣にかまれて発症する病。

以前もこの世界では黒い獣にかまれて発病する病が流行っていました。
その名前は『黒狼熱(ミッツァル)』。

この病への特効薬なんかは開発されていなくて、医術師たちはどうにかして治そうと必死です。
医術師たちも一枚板ではなく、この医療の開発と、宮中での権力争いが深く絡み合っていくのです。

ホッサルが使うのは現代医術にとても近い医療なんですよね。
麻酔をしたり、手術をする時には消毒をきちんとしたり。

『鹿の王』の世界観は、雰囲気で言うと古代の中国な感じ。
そこで現代医術に近い医療を行おうとしているホッサルたちの医術は、ある意味、迫害(?)を受けているような雰囲気もありました。

というのも、これまで宮中で使われていたのはどちらかというと祈祷をしたり・・・神頼みな感じの所も多い医術。
例えば、死の淵をさまよっている患者の家では同時にすぐに天国にいけるよう葬式の準備を始めたり。

送りだすということでは、段取りが良いように感じますが、送りだされる方では生きているうちから用意されるのはどうなのかなあ?
なんて疑問に思っていることさえも『罪』。

的な考えなんですね。
ホッサルは医術師なので、謎の病との闘いが多く書かれています。

そこで出てくるのは進化しようとする医術と、これまでのやり方を守ろうとする医術なんですよね。
どちらも人の命を救おうとしているところは同じなのに勢力争いでやりあっているところになんだか悲しさを感じました。

でもだからこそ、すごくリアルで。
やっぱりこれまで自分が信じてきた方法とは違うやり方を言われた時ってなかなか受け入れられないものですよね。

これは新しいものを提示する方も同じです。
この作品の中で言うのならホッサル側も、自分たちが信じる方法だけを押し切るというのもまた違うんですよね。

両方が良いところで折り合いを見つけていくことこそが大切なんですよね。
ただ純粋に医療の発展を遂げていく物語だけではなく、そこに宮中や宮中に関係する人の人間関係も一緒に展開しているところに読み応えがあります。

そしてそこに絡んでくるホッサルとミラル(ホッサルの助手)の関係。
ここにもまたドキドキさせて貰いましたよ。

さて、もう1人の主人公、ヴァン。
ユナという少女と一緒に逃亡の旅を続けます。

アカファ王とホッサルからヴァンの追跡を命じられた狩人の娘、サエ。
そんななか、ユナが連れさらわれてしまうのです。

ユナを案じて追跡するヴァンは本当にユナのお父さんのよう。
というのも、ヴァンには自分の家族(集団)を守れなかったという辛い過去があるからなんですね。

その頃、なくしてしまった自分の子どもをユナと重ねているヴァン。
思い出したらすごく悲しいですよね。

帝国の侵攻によって潰されてしまった小国の運命と言えばそれまでですが、そこに生きている人達には守りたいものも場所もあったわけで。
そう考えるとこういった侵攻とか、統治とかって言うのはなかなか遺恨の残るものだなと感じました。

何度も何度も想いを巡らせるのはやはり自分の家族のことで。
それを奪ったのが帝国でしかないというところも、やるせないような。

もう1人の主人公がホッサルという帝国側の人なのでどっちに感情移入して読めばよいのやら・・・。
物語全体を包み込んでいるのは、やるせなさだなあと思いました。

ここからはネタバレですよ!!!

ということで、『鹿の王 水底の橋』まで読んだ私。
皆さんが気になっているであろうヴァンのその後考察していきたいと思います。

ここからはガッツリネタバレしておりますので、注意して下さいね。

考察「ヴァンのその後」

最大のなぞでもあるヴァンのその後。
気になりますよね。

『鹿の王 水底の橋』ではヴァンのことに触れるのかなあ?なんて思いながら読んでたんでしたが・・・。
そうでもなかったですね。

キンマの犬にかまれたことによって自分が人間ではなく、狼になってしまうかもしれない恐怖と闘いながら生きているヴァン。
ホッサルとアクセス方法は違いますが、この世界を謎の病から救いたいという思いは2人とも同じでした。

だからこそ、ラストシーンではキンマの犬を引き連れて山奥に進んでいくんですね。
そしてその後ろ姿を追いかけていくユナ!!!

これまでヴァンがユナのことを大切にしてくれたからこそ離れたくないと感じたんでしょうね。
自分がキンマの犬に噛まれたからこそ、人間の世界の近くにいてはいけないと思ったんでしょうね。

だけど、ヴァンが1人で山奥に行くことにならなくて良かったなあと思いました。
これまでヴァンが付き合ってきた人たちとの関係のオカゲですよね。

まさに「情けは他人のためならず」ですよね。

キンマの犬の集団をつれて山奥にいったヴァンはどうなったんでしょうか。
私はこんな風に想像しました。

キンマの犬はもともと「火馬の民」に飼われていた集団。
とても頭が良く強い肉体を持っているので、統率することも簡単でしょう。

独角の集団を以前は率いていたヴァンからすれば新しい集団(家族)のようなものを持つことができたのはもしかしたら一番幸せなのかもしれません。
ユナたちと一緒にのんびり暮らしていてくれたら良いなあと思いました。

きっと「鹿の王」になっている

ヴァンが独角で飼っていたのは飛角という動物でした。
鹿にも似ているこの動物、扱いが少し特殊で難しそうでしたよね。

そんな飛角、のことについてこんな風に言っていたのを思い出しました。

『群れが危機に陥った時、己の命を張って群れを逃がす鹿が現れる』

そんな鹿のことを尊厳をもって「鹿の王」と呼ぶんだそうです。
ヴァンにはこういった行動をとることこそがその群れにとって最良の方法だと分かっているからこそ、最後に群れを連れて山の奥へと入って行ったんでしょうね。

もしかしたら、人間がキンマの犬のことを絶滅させようと考える人が出てくるかもしれない。
その時は自分が「鹿の王」になってキンマの犬を守り抜こうと決めたのかもしれません。

『鹿の王』の胸を打つ名言

『鹿の王』には現代の社会と切っても切り離せないような場面が本当にたくさんあります。
そこで胸を打つ名言がたくさんあるんですね。

そこで私が印象に残った名言をご紹介します。

名言①「おのれの身体に残る命の火が消えていくまで生きねばならない」

これはヴァンが岩塩鉱でキンマの犬にかまれて生死の境をさまよっている時のセリフです。
一族を失ってしまった悲しい過去を持っているヴァンにして見れば、簡単に死ぬことはできないと感じているのでしょう。

ただ、生に執着しているワケではなく、一族の分まで自分が生きるという大きな使命を背負っているように感じました。

名言②「幽霊が恐ろしいのは、とらえどころがないからでしょう?」

このセリフはミラルが言った言葉です。
ホッサルの助手として働いているミラル。

全部のセリフは

『幽霊が恐ろしいのは、とらえどころがないからでしょう?
幽霊に身体があって、捕まえることができるなら、きっと誰もこわがらないわ。

病も同じよ。
実体を捕まえることができたら、対処する方法を探ることができる。』

というものです。
未知との病に遭遇するということは、分からないことだらけで不安なことも多いですよね。

だけど、ミラルという女性は本当に強いなと感じました。
分からないからこそ、どんな手段をとってでもその実体をつきとめよう!という決意が見れます。

こんなにも頼もしい人物ってそうそういないですよね。

名言③「私の信念としては、絶対、という言葉は使い約ないのですが、残念ながら、そうです。」

これはホッサルの言葉です。
謎の病に対抗する手立てはあるのか?と聞かれての返答ですね。

だけど、この言葉に続くのが

「しかし、私は、その途方もなくおおいなるものの前で立ち尽くす気はありません。
そのすべてを「神々の領域」と名付けて納得し、触れずに目をつぶる気持ちにもなれないのです。」

という言葉。

「今」は確かに特効薬は見つかっていないかもしれない。

だけどいつかの未来には必ず辿りつけると信じている。
そんな希望が見える言葉ですよね。

名言④「だが、隙が生じるのは、有りえぬと思った時だ。」

これは、ヴァンがユナを連れさらわれたあとに発した言葉です。
何よりも大切に、何からも守ろうと思っていたユナをまんまと連れさらわれて自責の念に駆られているんでしょうね。

隙を生じさせてしまったということがヴァンにとっては何よりも辛かったのかもしれません。

名言⑤「言い訳はいくらでも見つかる。」

これはホッサルの言葉です。
彼の医療に対する真摯な想いが垣間見れる瞬間でもあります。

「言い訳はいくらでも見つかる。
理屈はいくらでもつけられる。

医術のため、後に人を救うためである、と思うことができれば。」

これはホッサルと対抗する勢力との間にある大きな溝を浮き彫りにさせる言葉でもないでしょうか。
「この方法はダメだ!」と決められている事の中にこそ、医療の発展があるのかもしれない。

そのことに勘付いていながら進化させようとしていない。
そのことこそが歯がゆいんだ、とホッサルは訴えているように感じました。

禁忌だ、と回避するのではなく人を救うためだ、と自分がその責任を追う覚悟さえ持っていれば良いんだという彼の強さを感じます。

名言⑥「才と言うのは残酷なものだ。」

これはヴァンの言葉です。
『鹿の王』の中で一番胸に響いたセリフかもしれません。

「才と言うのは残酷なものだ。
ときに死地にそのものを押しだす。
そんな才を持って生れなければ、己の命を全うできただそうに、なんと哀しい奴じゃないか、と。」

これは、才能豊かな人が全て幸せとは限らない、という感じの意味なんですよね。
どういうことか、というと、集団でも部族でも長となる才を持って生まれてくる人はいるわけです。

またその逆も然りなんですが、長になるということはそれだけ才能があるということ。
もし自分や部族の危機などに直面したら、一番に部族を存続させようと動きます。

才能があるので、その方法もすぐに思いつくわけです。
もしここで才能がなければ、その重要な役目を担うこともありません。

そういった才能が豊かであるがために起こってしまう「犠牲?」のようなものを表現しているんですよね。
なんだかなあといった感じです。

『鹿の王』は今だからこその一読を!

世界的なパンデミックの今、扱っている題材はとても重いものです。
人によっては目を通したくないと感じる瞬間もあるかもしれません。

しかし、だからこそそんなパンデミックにどうやって立ち向かえば良いのか?
そんなことを示してくれる作品なのかもしれないのです。

もし少しでも読んでみようかなあと思いましたら、一度目をとおすことをお勧めします。
不思議な世界観と、どこか懐かしいような。

そして勇気がわき出てくるような・・・・。
そんな物語になっていますよ。



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