日本語というのは本当に使う言葉1つで大きく印象が変わってくるものです。
何とも難しいですよね。
難しさの1つとして助詞というものがあります。
書いているこの文章の中にも多く存在していますが、この助詞「てにをは」、その意味や正しい使いかたを本当に理解していますか?
誰かに教えようと思った時に、なかなか説明が難しい助詞「てにをは」。
どうやって教えればきちん丁寧に教えることができるのか?
そこで今回は助詞「てにをは」の
- 意味
- 正しい使い方
- 教え方
について例文を交えながらご紹介したいと思います。
助詞「てにをは」の意味は?
助詞「てにをは」の意味から確認していきましょう。
あなたは誰かから
「この文章はてにをはが間違っている。」
なんて言う指摘を受けたことはありませんか?
この時の言葉の意味は
「この文章の助詞は少しおかしいよ。」
ということです。
そう、てにをはとは、「助詞」のことを一般的に指しているんです。
もちろん助詞には色々な種類があります。
「てにをは」も含まれていますが、他にもありますよね。
まずは、助詞の4種類からおさらいしていきましょう。
格助詞
主に体言(名詞)について、関係を表すことになります。
「主語」「連体修飾語」「連用修飾語」「並列の関係」のいずれかを表す事ができます。
<格助詞の語例>
が、の、を、に、へ、と、で、や、から、より
<例文>
私 が 行きます。(主語を表す)
彼女 の コップです。(連体修飾語を表す)
みんな に 話す。(連用修飾語を表す)
君 と 僕 は、いつも一緒だ。(「と」で並列を表す)
接続助詞
主に活用のある語(動詞・助詞・形容詞・形容動詞など)の前後の文節を繋げます。
「仮定の順接」「仮定の逆接」「確定順接」「確定の逆接」のいずれかを表すことになります。
<接続助詞語例>
ば、と、て、で、し、が、ので、のに、ても、でも、たり、だり、なり、つつ、けれど、ながら、ものの、ところで
<例文>
君が好き なら 僕も好きだ。(仮定の順接を表す)
君が好き でも 僕は嫌いだ。(仮定の逆接を表す)
君が好きだった ので 僕も好きになった。(確定の順接を表す)
君が好きだった が 僕は好きにならなかった。(確定の逆接を表す)
副助詞
色々な語について様々な意味を表します。
色々な役割を持っているので、一番教えるのが難しい言葉となるでしょう。
副助詞を使わなくても文章の意味は変わらないことがほとんどです。
しかしその事柄がどの程度なのか?という特別な意味を与える事が多いですね。
<副助詞の語例>
は、も、が、こそ、さえ、でも、しか、など、まで、だけ、ほど、きり、なり、やら、だの、ずつ、とか、すら、だって、ばかり、くらい、なんて
<副助詞例文>
犬 こそ 好き。(協調)
犬 は 好き。(題目)
犬 も 好き。(同類)
犬 だけ 好き。(限定)
犬 ぐらい 好き。(程度)
犬 さえ 好き。(類推)
終助詞
文章の終わりについて意味を添える役割をします。
「希望」「禁止」「疑問」などの意味が加わります。
<終助詞の語例>
な、や、よ、わ、ぞ、ぜ、か、の、ね、さとも、もの、かしら、ものか
<終助詞の例文>
遊園地にでも行こう か。(疑問を表す)
遊園地には行く な。(禁止を表す)
遊園地は楽しいだろう な。(希望を表す)
「てにをは」の由来は?
助詞はたくさんありますが、その中でもなぜ「てにをは」だけをピックアップして呼ぶようになったのでしょうか?
その由来は漢文にあります。
漢文は漢字だけで書かれています。
この漢文を訓読みする時に使うのが点図というものです。
点図は平安初期に始まり、室町時代ごろまで使われていました。
漢字の四隅や中央、上下に朱などで記している符号のことです。
→ 漢文訓読に用いられた訓点の一種「ヲコト点」は、漢字の四辺や内部に点や線の符号を入れ、その位置と形の2軸によって読みを与える(例えば中央に小点を打つと「の」を表す、等)方法で、中世までよく用いられました(画像は『デジタル大辞泉』)。→ pic.twitter.com/8SNxfrvl3h
— 田中 草大 (たなか そうた) (@_sotanaka) October 27, 2020
『山』という漢字の左上に点がついていれば「山に」。
『山』の真ん中に点がついていれば「山の」。
『山』の右下に点がついていれば「山は」となります。
こうやって漢文を読んでいたんですね。
このときはオコト点と呼ばれていたんですが、ここから四隅の言葉をとって「てにをは」で助詞を指す言葉となっていったんです。
助詞「てにをは」の正しい使い方できてる?
助詞「てにをは」というのは、言葉と言葉をつなぐ言葉です。
しかしそれ以上に、自分の気持ちや強調したいことより明確に表す役割を持っているんですね。
母国語が日本語であれば、そこまで難しくないかもしれません。
しかし改めて考えてみると、あれ?この時はどっちを使った方が良かったんだったっけ?
人に教えるにはどんな風に伝えれば良いんだっけ?
なんて迷うことも多いですよね。
日本独特の表現なので、ニュアンスを伝えるというのはなかなか難しいものです。
そこでまずは、間違えやすいものからご紹介していきましょう。
「は」と「が」の使い分け
格助詞の役割というのはその二つの言葉の関係性を示すようになっています。
中でも「は」と「が」はどちらも主語について意味を与えます。
どちらを使っても相手には意味が伝わりやすいので、間違えやすくなっています。
しかし、この2つを少し変えるだけで伝えたい内容が少し変わってくるんです。
【文章の主人公が変わる例】
「は」と「が」の使い方によっては文章の意味が大きく変わってしまう場合があります。
まずは、例文を見てください。
B.私は帰ったら手洗いをしている。
この2つの違い、分かりますか?
Aの方は「私」以外の誰かが、帰宅した時に手洗いをしていたという意味になります。
一方、Bは「自分は帰宅したら必ず手を洗っている」という意味です。
【強調的な意味になってしまう例】
続いてはこちらです。
B.君は出て行った。
この2つ、意味としては全く同じです。
しかし、BよりAの方が強調されている感じがしませんか?
自分がどう表現したいかを考えてどちらにするか選ぶようにしましょう。
「が」と「を」の使い分け
「が」と「を」も良く迷うポイントです。
B.ビールを飲みたい。
この場合はどちらを使うのが正解でしょうか?
どちらも意味は通じるような感じがしますが、実は、Bの方は正確には正解ではありません。
どちらも願望を表す文章なのですが、後に続く文でどちらをつけるのか変わってきます。
「~たい」という願望を示す言葉で終わっているので、「が」という目的格の助詞を使うのが正解です。
では「を」を使うときはどうすれば良いのか?というと
ビールを飲みたいと思う。
とすれば良いのです。
とっても細かい部分ですが、この2つの使い分けができれば助詞はバッチリですね。
【感情を表現する時の「が」と「を」】
自分の感情を表現すると時にも「が」と「を」を使うことが多いです。
例えば
- 好き
- 嫌い
- 悲しい
- 嬉しい
などです。
これも先ほどと同じ感じです。
B.ケーキを好きだと思います。
ストレートに「好き」と表現する場合には「が」を使います。
一方で少しナチュラルに表現する場合には語尾に「~と思う。」などの言葉をつけたして感情を表現します。
「で」と「に」の使い分け
「で」と「に」を使う場面、特に場所を表す時につかう「で」と「に」は迷うポイントでもあります。
例えば
B.カフェに待ち合わせです。
この2つです。
どちらも通じる言葉でもありますよね。
ですが、この場合の正解はAの方です。
場所を示す時に使う「で」と「に」では使う時の意味が大きく関係してきます。
- 「で」・・・人の意志による行動
- 「に」・・・物や人がいる場所のこと
といった感じですね。
つまり、先ほどの例文では、待ち合わせをするのは自分たち=人です。
待ち合わせをする、という行動は人が起こしてるので、この場合は「で」が正解となるのです。
では「に」はどんな時に使えば正しいのでしょうか?
例えばこんな感じです。
「待ち合わせをしたカフェに彼がいる。」
この場合であれば、彼がいるという状態のカフェを示していますので、「に」となるんですね。
「に」「へ」「まで」の使い分け
「に」「へ」「まで」はいずれも行き先や目的地を表す言葉になっています。
ちょっとしたニュアンスの違いですが、これもしっかり使い分けていきましょう。
B.街へ行く。
C.街まで行く。
どれも「街に出かける」という意味になります。
しかし、ちょっとずつニュアンスは違ってきますよね。
ここでは
- 「に」・・・目的地点
- 「へ」・・・移動する方向
- 「まで」・・・移動の過程
を表していると覚えましょう。
そしてこの行き先を表すときは、他の言葉も組み合わせて使うことが多いのです。
例えば
- 電車で街に行く・・・到着した様子が想像できる。
- 電車で街へ行く・・・これから出掛けて行くイメージ。
- 電車で街まで行く・・・電車での移動に重きを置いているイメージ。
といったところです。
なかなか難しいですね(^^;
「に」と「を」の使い分け
「に」と「を」もほとんど同じような役割をすることが多く、使い分けるのが大変なものになっています。
例えば
B.小学校を訪れる。
といったもの。
どちらも間違いではありません。
しかしAは「何か(物)が」小学校に訪れたことを表します。
そしてBは「誰か(人)が」小学校を訪れたことを表しています。
ちょっとした違いではありますが、使い方によっては違和感の大きな文章になってしまいますね。
意識して使いたい要注意助詞
助詞の選択によって、相手への伝わり方が大きく変わるものがあります。
そうなると選択ミスであなたの想いが相手になかなか伝わらないということもあるのです。
できればスマートに覚えて、きちんと誤解されないようにしたいですね。
「で」と「を」で雰囲気が変わる
まずは「で」と「を」です。
この場合、相手から何かの選択を迫られている時受け答えになります。
「そうめんとおうどん、どちらをお召し上がりになりますか。」
B.そうめん を お願いします。
この場合、どちらが正解でしょうか?
正解はBです。
「で」と答えてしまう人は結構多いですよね。
しかしこの「で」というのはどことなく投げやりな印象を与えてしまう言葉でもあります。
良く夫婦喧嘩などに発展してしまう例ですね(笑)。
「何か食べたいものある?」
B.そうめん を 食べたいな。
この2つ、どちらが言われたら嬉しいか、分かりますよね?
もし何かを聞かれたりしたら意識的に選択する時は「を」を使うようにしましょう。
「より」と「から」はフォーマルさを考えて
次に「より」と「から」です。
B.心 より お慶び申し上げます。
この2つはフォーマルな場所で使っても遜色ない言葉です。
しかし、より丁寧に使うのであればBの方が良いですね。
Bの方が更に丁寧な印象を与えます。
取引先や、仕事の相手など上品で丁寧に表現したい場合は「より」を使いましょう。
助詞「てをには」を正しく使うために
助詞「てをには」は間違ったとしても意味が通じることも多くあるため、間違いに気付きにくいという一面があります。
ですが、間違えてしまうと自分が伝えたいことが十分に伝わらないということもあるのです。
そこで助詞「てをには」を正しく使うためのトレーニング方法をご紹介します。
トレーニング方法①「正しい文章に触れる」
まず、自分の中に助詞「てにをは」の正しい文章というものが入っていないといけません。
自分の中にないものは出てきませんから、インプットするという作業が必要になります。
正しい文章、それはどこにあるのでしょうか?
印刷物や出版物、これは添削されているものになります。
助詞「てにをは」の詳しい人たちが読んで添削しているわけですから、正しい日本語と言えるでしょう。
この文章を読むというだけでも相当な量のインプットになります。
本を読むのも良いですし、新聞などを読むのも良いですね。
そしてそれ以上に、助詞「てにをは」に興味を持って正しくない使い方があった時の違和感に気付けるようにしていければ良いと思います。
トレーニング方法②「自分が描いた文章を音読してみる」
字面だけでは分かりにくい場所も、声に出してみると意外に気付くものです。
ニュアンスの違いや、ちょっとした表現の差など、音読してみると違和感に気付くことも多いですよ。
記者さんたちの中には、自分が書いた文章を読み上げツールを使って機械に読んでもらうこともあるようです。
こうすることで、助詞の違和感に気付くんですね。
とにかく、自分が書いた文章の違和感に気付くきっかけを持つ。
これこそが大切なことなんです。
トレーニング方法③「自分が書いた文章を人に見てもらう」
仕事などで書類の確認をする時には、誰か他の人に確認をお願いします。
そこで助詞の使い方など間違っていないか、確認してもらいましょう。
自分でも気付かないうちに間違ったままの使い方をしている助詞は結構あったりするものです。
間違いをそのままにしないで、間違いは気付きなおすようにしましょう。
日本独特の表現の助詞
今回は助詞「てにをは」についてご紹介しました。
日本語独特の表現ですが、実は英語に翻訳することもできます。
助詞「てにをは」を英語で表現すると「particle」という単語になります。
この単語は他にも
- 分子
- 粒子
などといった意味に使われる事が多いのです。
やはりとっても細かいものですね(^^;
そしてその単語を使った表現として
The sentence with these particles is ungrammatical.
というものがあります。
これは「てにをはが、この文章には合っていない。」という意味になります。
なかなか使う機会はないかもしれませんが、覚えておいて損はないかもしれませんね。
以上「助詞「てにをは」の意味や正しい使い方を例文とともに!これで教え方もバッチリ」をお送りしました。