雛人形の7段飾りを見てみると、5人囃子の1つ下にいるのが右大臣と左大臣です。
「うれしいひなまつり」の歌の中にも出てきますよね。
そんな右大臣と左大臣はどっちがどっちだったっけ?
と分からなくなってしまうもの。
そこで今回は、どっちが右大臣でどっちが左大臣なのか。
雛人形で飾るにはどっち側で位置はどこなのか?
詳しくご紹介したいと思います。
右大臣と左大臣はニックネームのようなもの
おひなさまと一緒に飾られることの多い右大臣と左大臣。
右大臣と左大臣が本名ではありません。
本当の名前は
- 右大臣:右近衛少将(うこんのしょうしょう)
- 左大臣:左近衛中将(さこんのちゅうじょう)
というんだとか。
役職は「随身(ずいじん)」というもので、お内裏様をいつも守っている人です。
出掛けるときもそうですが、宮中でも常に近くにいてお内裏様の警護をしています。
雛人形では、右大臣は若者のお人形。
左大臣は白いひげを蓄えた老人のお人形です。
実際とはちょっと違いが大きいのだけど・・・
右大臣、左大臣というのは実際に宮中であった役職の名前です。
しかもその位はとても高いものでした。
左大臣は「一の上(いちのかみ)」とも言われていて今で言う内閣総理大臣の地位でした。
公卿(くぎょう)という公家の中の最高幹部たちが集まっている中で、一番位の高い太政大臣に次ぐ地位となっています。
太政大臣には適任者がなければ空席でもよし、とされていたので実質、政治の中枢を担っていた人が多い地位でもあります。
少し歴史の教科書をめくってみると、
- 藤原道長
- 藤原頼道
などは長く左大臣になっていて、執権政治を行っていました。
このくらい高い地位なのです。
雛人形のように弓や刀を持ってお内裏様やお姫様のそばに仕えている随身を兼任することは、まずありえなかったのです。
右大臣と左大臣はどっちがえらいの?
左大臣は現在で言う内閣総理大臣でした。
右大臣は「副総理」といったところです。
左大臣の補佐役として仕事を任されていたということですね。
戦国時代になると、織田信長や豊臣秀吉など日本を統一へと導いて行く指導者がその地位を貰っていました。
右大臣と左大臣にはそこまで大きな差はありません。
しかし一緒に職務に当たることも多く、左大臣の方が年長者がついていたので、左大臣の方が位は上ということになりますね。
左大臣の方が位が上?
右大臣、左大臣となるとどちらも同じ地位の人としても問題ないように見えます。
ですが何故左の方が位が上となったのでしょうか?
これは日本の古来から伝わる「左上右下(さじょううげ)」という考え方からなっています。
そもそも、飛鳥時代に中国から遣唐使を通じて伝わってきたとされています。
これは「天帝は北辰(ほくしん)に向かって座して南面す」という考え方が元になっています。
天帝は北極性を背中にして太陽の方を向いて必ず座るものとされていて、天帝から見て太陽の昇る左(東)が上位とされたためです。
中国ではこれ以降、左上位と右上位が入れ替わったりもしました。
しかし日本ではこの左上位から変わることはなく、現代まで受け継がれてきています。
この事から左大臣の方が位が上となっているんですね。
雛人形の右大臣と左大臣はちょっと違う
実際の役職を考えると、右大臣と左大臣が5人囃子の下段に配置されるということは考えられません。
雛人形の右大臣と左大臣というのは随身という役職の人となります。
実際の右大臣や左大臣とはちょっと違うかもな・・・といった感じですね。
しかし雛人形というのは、お内裏様、つまり天皇の結婚式の様子を表したものでもあります。
天皇の結婚式なので右大臣や左大臣が列席するのは当然です。
そして天皇の身を守る役割をしているので、結婚式という祝いの席でも弓や刀を携えているんですね。
童謡「うれしいひなまつり」の歌詞の中にも『少し白酒めされたか 赤いお顔の右大臣』というのがありますね。
お内裏様とおひな様の結婚式という祝いの席だからこそ、いつもは緊張して政治をとり行っている右大臣、左大臣も羽を伸ばして楽しんでいるんだなあという場面ですね。
しかし、これは実はちょっとした勘違いを産む結果になる歌詞でもあります。
ここで白酒を飲んで赤い顔をしているのが「右大臣」となっていますが、本当はお酒を飲んで赤い顔をしているのは「左大臣」なんです。
これは作詞家であるサトウハチローさんが勘違いをしてしまったことが原因だと言われています。
実際に人形の顔を見てみると、左大臣の方が少し赤い顔をしています。
これは雛人形を飾る時の左右どっち問題に派生していきます。
では、右大臣と左大臣を飾る位置について詳しくご紹介していきましょう。
右大臣と左大臣を雛人形に正しく飾る位置は?
右大臣、左大臣って名前なんだから左が左大臣、右が右大臣というのは分かります。
でも、どっちから見て「右」?
どっちから見て「左」なのでしょうか?
関東雛と京雛では飾る位置も違う
最近、雛人形として流通しているのは関東雛です。
というのも、京雛は御殿造りのものが多く、組み立て方や片づけ方が特殊であったからだと言われています。
しかし、最近では京雛を継承する京風雛というのも登場しています。
どこが違うのかというと、お内裏様とおひな様の座る位置が違うのです。
関東雛は向かって左にお内裏様を、右におひな様を飾ります。
京風雛はこの真反対なのです。
これに合わせて三人官女や仕丁は持ち物の順番が左右反転するようです。
しかし、右大臣左大臣はどちらも同じ位置で良いとのことですね。
右大臣と左大臣を飾る位置は?
右大臣と左大臣を飾る位置は7段飾りであれば5人囃子の一段下である4段目に飾ります。
向かって右に左大臣を。
向かって左に右大臣を飾るようにします。
とてもややこしいですね(^^;
ですが、飾る時はおひなさまと同じ目線に立ったら・・・ということで並べてみるのが良いと思います。
お内裏様やおひな様から見て右が右大臣、左が左大臣と覚えておくのが一番覚えやすいかな?と思います。
右大臣と左大臣の持ち物は一緒?
随身でもある右大臣と左大臣は、持ち物も同じものを持っています。
位置と持ち物は
- 腰に刀
- 背中に背負い矢
- 右手に矢羽
- 左手に弓
となっています。
随身ですので、警護をするための持ち物ですね。
しかし、右大臣と左大臣には位の違いがあります。
ほとんどの雛人形では右大臣と左大臣のきている着物には差があるんですよ。
着物の歴史は古く、学校の歴史の授業で習った「冠位十二階」というものが関わってきます。
聖徳太子の時代に制定されたんですが。
なんだか思い出してきたという人もいますよね?
この中で位の高い人が着る着物の色というものが決められていたのです。
ここで右大臣と左大臣がきている着物を見てみましょう。
左大臣の着物は黒色を身につけていませんか?
黒というのは官位四位以上の人が身につける色とされていました。
そして右大臣が身につけている着物の色は、多くの場合「赤」ではないでしょうか?
赤は官位五位以上の人が身につける色です。
こういったところにも、きちんと違いをつけているんですね。
毎年どっちだったっけ?問題が浮上してしまう
右大臣と左大臣は、名前に「右」「左」とついているので、どっちがどっちだったっけ?問題に陥りやすい人形です。
童謡「うれしいひなまつり」の歌詞を思い出してみると余計にややこしくなってしまうかもしれませんね。
ですが、一度コツを掴んで覚えてしまえばこっちのもんです。
お内裏様やおひな様から見て右が右大臣、左が左大臣と覚えておきましょう(^^)
以上「雛人形の右大臣と左大臣の違いや偉いのはどちら?由来は太政大臣でそれに次ぐ地位は?基本の位置や並べ方も解説」をお送りしました。