今年も憂鬱な季節がやってきました。
ジメジメしてちょっとムシムシして洗濯ものが乾かない。
それが私が梅雨が嫌いな理由です。
梅雨に「走り梅雨」という時期があるのは知っていますか?
日本独特の季節の表現の仕方で、俳句の季語や時候の挨拶としても使われるんだとか。
そこで今回は走り梅雨の
- 意味
- 由来
- いつ使えばOKなの?
- 時候の挨拶の例文
についてご紹介します。
走り梅雨って知ってる?
梅雨というのは、春の終わりから夏にかけて曇りの日や雨の日が長期間続く季節のことを言います。
天気予報を見ていると「今年の梅雨入りは例年並みで~」などと言っていますよね。
梅雨前線というものが日本列島の上空にいて停滞している期間の事で、長雨が続きますね。
基本的に、南から順に梅雨入りしていきます。
前線というのは、温かい空気と冷たい空気がぶつかる境目のことを指します。
発源地の違う寒気団と暖気団が出会うと二つはすぐには混ざらず、境界ができます。
寒気団の方が下に潜り込むようになり、暖気団は少し上になります。
2つが接しているところを前線面、といい、2つが交わるところと地表が接しているところが「前線」というんですね。
梅雨の時期にこのできる前線を『梅雨前線』と言います。
一番早い梅雨入りは奄美諸島や沖縄で、5月ごろから梅雨入りするんですね。
「走り梅雨(はしりつゆ)」は、梅雨に先だってぐずついた天気が続く期間のことを指します。
つまり気象庁が梅雨入りを宣言する前に長期的に曇りや雨が続く。
この期間を指して「走り梅雨(はしりつゆ)」というんですね。
走り梅雨はどうやって起こる?
走り梅雨というのは、5月中旬から下旬にかけて沖縄や奄美地方が梅雨入りすることで本州の南岸にも前線が停滞することがあります。
この時の天気が「走り梅雨」です。
だからといって奄美地方や沖縄で「走り梅雨」が見られないということではありません。
沖縄や奄美地方でも梅雨入りする前に「走り梅雨のようですね。」と言われ、本格的な梅雨に向かって準備をする期間となります。
走り梅雨は一般的に一度収まり、快晴が続きます。
時々、走り梅雨が長引いてそのまま梅雨入りするということもあるんだそうですよ。
走り梅雨の意味は?
例えば『〇〇のはしり』なんていう表現を聞いたことはありませんか?
物事が広く浸透する前の先駆けのことを指して『〇〇のはしり』という表現を使います。
「走り梅雨」の「走り」もこれと同じ意味で、梅雨本番が来る少し前の梅雨の予行練習(?)のようなもの、という意味です。
走り梅雨はその年の天気によっては長引くこともあり、そのまま梅雨入りとなることもあります。
しかし、走り梅雨が一旦落ち着くと、晴天が続き、再び前線が本州付近に停滞し始めると本格的な梅雨入りとなる傾向が多いようです。
走り梅雨には何かルールがあるのか?というと細かいものはほとんどきまっていません。
ただ、『梅雨が始まる前の5月中旬ごろから6月まで』となっていて、何月何日に終わるという決まりはほとんどありません。
更に「この雨から梅雨だ!」とはっきりとした決まりがないように、走り梅雨にも「この日からです!」というはっきりとした区切りはありません。
「梅雨入りしそうですね。」
なんて天気予報で言っているのを聞きますよね。
何月何日から梅雨入りですよ!なんていうはっきりしたものはなく、梅雨入りも梅雨明けも少し曖昧な感じでもありますよね。
相手が天気ですから仕方ないのですが、走り梅雨もこの特性と同じ感じになっています。
走り梅雨と同じ意味の言葉はある?
走り梅雨と同じ意味の言葉として使われるのが
- 迎え梅雨
- 卯の花くたし
などがあります。
卯の花くたしは漢字で書くと「卯の花腐し」となります。
卯の花とは5月ごろに花をつけるアジサイ科ウツギ属の『空木(うつぎ)』に咲く白い花です。
この卯の花を長雨で腐らせてしまうことから「卯の花たくし」とつけられたんですね。
走り梅雨の反対の言葉はある?
何を持って「反対」とするかに寄りますが、梅雨入りに対して梅雨明けという方向性での反対の言葉をご紹介したいと思います。
「走り梅雨」に対しては、梅雨明けした後、しばらくして雨が続く時に使われる言葉は「帰り梅雨」です。
梅雨が帰ってきちゃったって感じですね。
帰り梅雨とよく似た言葉には「送り梅雨」もあります。
しかし、「帰り梅雨」と「送り梅雨」は全く違う意味で使われます。
「送り梅雨」は梅雨明け間近に降る激しい雨のことを指します。
季節が変わっていく時は天候が不安定にもなりますね。
その期間のことを「送り梅雨」というのです。
梅雨の時期以外にも使われる事がある「梅雨」がつく言葉
日本には四季があり、そして季節の移り変わりを表す言葉もたくさんあります。
特に面白いのは、その時期の言葉ではないのに、あえてその言葉を使っているモノとかです。
例えば、梅雨の時期ではないのにあえて「〇〇梅雨」と表現する言葉もあるんですよね。
「梅雨」とついていれば梅雨の時期の言葉だと勘違いしてしまいそうです。
間違わないためにも、ここで一緒にご紹介したいと思います。
菜種梅雨
菜種は菜の花のことです。
菜の花が咲く3~4月ごろの天候を指します。
菜の花が咲いている頃に続く長雨を指して「菜種梅雨(なたねつゆ)」と言うのです。
この雨は色々な花を咲かせる雨になるということで「催花雨(さいかう)」とも呼ばれます。
春の雨と言えば「春雨」を思い浮かべる人も多いと思います。
「春雨」はこの頃の優しい雨のことを指すんだそうです。
たけのこ梅雨
5月上旬はたけのこが育つ時期とされています。
この時期に吹く南東風のことをたけのこ梅雨と言います。
何故「梅雨」なのか。
それはこの時期の南東風は雨を伴うことが多いからなんだそうですよ。
蝦夷梅雨
北海道は梅雨はないとされています。
なんせ梅雨前線が北海道の方まで影響を及ぼさないためです。
ですが、本州が梅雨の時期に北海道でもぐずついた天気が続くこともあります。
この時の天気を「蝦夷梅雨(えぞつゆ)」と呼ぶんですね。
すすき梅雨
秋になるとすすきが生い茂る季節がやってきます。
大体8月後半から10月ごろでしょうか。
この頃に続く秋の長雨を「すすき梅雨」と呼びます。
秋雨と言ったり、秋霖(しゅうりん)と言ったりもします。
6月ごろの梅雨は梅雨前線ですが、この頃の雨は秋雨前線の影響で長雨となるんですね。
さざんか梅雨
11月下旬から12月にかけて移動性高気圧が北に偏り、前線が本州の南海上に停滞して長雨を降らせる事があります。
この時の事をさして「さざんか梅雨」と言います。
ちょうどさざんかの花がたくさん降る季節ですね。
このように季節の移り変わりには、ほとんどと言ってよいほど「〇〇梅雨」と呼ばれる表現があるんですね。
梅雨を英語で言うとどうなるの?
梅雨はご存知の通り、日本独特の季節表現です。
英語圏では『梅雨』という気象自体ないところもあります。
なので、直接的に「梅雨」という意味をしめす言葉はありません。
ですが、表現するとしたら「the rainy season」となります。
更に更に、「走り梅雨」となると「a rain continues in advance of the rainy season」という感じですね。
走り梅雨の由来は?
では、走り梅雨はどこからつけられたのでしょうか?
この言葉って「走り」と「梅雨」という言葉の2つが組み合わされた言葉ですよね。
なので、それぞれの由来を見ていきたいと思います。
「走り」の由来は?
「走り」には「先駆け」や「初物」などの意味があります。
梅雨以外にも食べ物にも使われることもありますね。
そんな「走り」、最初は「走り木」(はしりぎ)という言葉から来ているようです。
これは”襲来する敵を防ぐために高所から木を転がして撃退する戦術”のことだそうです。
この戦術を生み出したことで「物事の始まり」という意味になったんだとか。
ここから「走り」には「先駆け」という意味がついたんですね。
「梅雨」の由来は?
「梅雨」には「つゆ」と「ばいう」という2通りの読み方がありますよね。
この言葉は中国から伝わった言葉です。
中国では”雨が多く黴(かび)が生えやすい時期”という意味で「黴雨(ばいう)」と呼ばれていたそうです。
しかし日本に伝わってくる時に、同じ音である「梅」に漢字が変わって伝わったと言われています。
というのも、「黴」では何とも憂鬱な気持ちになってしまいます。
しかし「梅」になるとそこまでイメージも悪くないというんですよね。
6月ごろと言えばちょうど「梅」が実をつける季節でもあります。
ということで、「梅雨」となったというのです。
さらにそこからなぜ「つゆ」と読むのかというと雨が多く「露にぬれて湿っぽい」という意味を持つ「露けし」という言葉からとったという説があります。
「つゆ」という読み方には日本独自の表現が関わっていたんですね。
「つゆ」の読み方にはもう一つ説があり、それは「梅を潰れる季節」から来ているというものです。
これは梅だけではなく、長雨により食べ物や衣服が傷んでしまう季節であるということで「潰ゆ(ついゆ)」。
ここから派生して「つゆ」となったとしています。
今より、保存技術や科学の力もなかったでしょうから、食べ物の保存には気を使う季節であったでしょうね。
と、この2つの意味を合体させて「走り梅雨」となったんですね。
「走り梅雨」は俳句で使うとどうなる?
俳句には季語が必要になります。
しかし、「五月雨」などでご紹介したように、俳句の世界の季節というのは旧暦のものに揃えています。
これを踏まえて「走り梅雨」を見てみましょう。
「走り梅雨」は俳句では”初夏”の季語として使われます。
「走り梅雨」は梅雨が始まる前の一瞬のことを指しますので、使えるのは本当に短い期間となりそうですね。
「走り梅雨」を使った俳句ご紹介
走り梅雨 古表札の まづ濡れて・・・・小林清之介
走り梅雨 気候の変化 身に添はず・・・松尾緑富
喪主となる 甥まだ若し 走り梅雨・・・山口たけし
季節の変化を表しているものが多いですね。
「走り梅雨」を時候の挨拶で使うのなら
走り梅雨は季節を表す言葉です。
なので時候の挨拶にも使うことができます。
俳句の世界では旧暦に当てはめ、季語は”初夏”となっていました。
しかし、時候の挨拶で使う場合は、新暦にあわせて使うのが良いです。
つまり、走り梅雨の期間、5月中旬から6月ごろまでの挨拶として使いましょう。
走り梅雨を使った時候の挨拶の文例
これから始まるであろう梅雨を思い起こさせるような挨拶文になりますね。
などですね。
この言葉のあとに、相手側の体調や活躍を願う言葉をつければそれでOKとなります。
例えば
などですね。
季節にあった言葉をチョイスして季節を楽しみましょう
日本には色々な季節を表す言葉があります。
ビジネスシーンなどでは使うことも多いですよね。
しかし、困ったことに旧暦と新暦というものがあり、季節を表す言葉の中には新暦とはズレているものもあります。
是非、それぞれの本当の季節を理解して適切な時期に使えるようにして下さい。
以上「走り梅雨(はしりづゆ)とは?その意味や由来!俳句の季語や時候の挨拶としての使い方や例文も」をお送りしました。