長らくメディアをにぎわせていた安保法案が遂に9月19日未明、参議院で可決され、成立しました。
そこで、この記事では
今一度、「安保法案」とは
反対派などが戦争法案と叫んでいた「安保法案」とは、そもそも、どういうものなのでしょうか?
「国民への説明が足りていない」と感じている人が多かったわけですから、理解していないことも多いことでしょう。
安保法案は、
- 新法の「国際平和支援法案」
- 既存の法律の改正案
などを一つにまとめた「平和安全法制整備法案」から成り立っています。
「国際平和支援法案」は、簡単に言うと自衛隊の海外派遣を随時可能にするものです。
現行法では、外国軍隊への後方支援などをその都度、特別措置法を作って対応していたんですが、そうしなくても対応できるように恒久法として制定したということです。
「平和安全法制整備法案」は、全部で10の法律を改正しています。
この改正によって新たにできるようになることを、挙げていきましょう。
- 米軍への弾薬提供(自衛隊法の改正により)
- 在外邦人の救出(自衛隊法の改正により)
- 駆け付け警護、安全確保業務、国連が総括しない活動への参加(PKO法案の改正により)
- 日本周辺以外の外国軍への後方支援(周辺事態法を改正した、重要影響事態法により)
- 存立危機事態で自衛隊が防衛出動し、集団的自衛権を行使(武力攻撃事態対処法を改正した武力攻撃・存立危機事態法により)
他にも色々ありますが、大きい所ではこのあたりでしょうか。
特に、大きく問題とされているのが「集団的自衛権」の行使です。
「集団的自衛権」の行使が憲法違反ということで、かなり話題になっていました。
集団的自衛権とは、物凄く簡単に言えば、同盟国など親密な国を守るため武力使う権利のことになります。
自国を守るために使うのが「個別的自衛権」で、自国以外を守るのが「集団的自衛権」ということですね。
この集団的自衛権という権利を行使することに関して、「憲法9条に反している」と問題になっているわけですね。
ちなみに、憲法9条の条文は以下のようになっています。
1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
この9条の1項に対して、「集団的自衛権」は『違憲』という訳です。
内閣側としては、今まで必要最小限度の実力行使は可能という解釈でやってきました。
そして、自衛権発動三要件は、
- 我が国に対する急迫不正の侵害があったこと
- 他に適当な手段がないこと
- 必要最小限度の実力行使であること
の3つでした。
このうちの、最初の要件を
「我が国と密接な関係にある国に対する武力攻撃が発生し、我が国が侵害される明白な危険がある場合」
とすることにより、集団的自衛権を行使できるという形に持っていったわけです。
確かに、憲法学者の多くが、「安保法案」は憲法9条に反しているという判断をしています。
ただ、そもそも憲法9条の2項から、自衛隊自身も違憲としている憲法学者が多いのも事実なんですよね。
とはいえ、「自衛隊自体もってはいけない」ということに反対する人は、現状多くないと思います。
そうなると、「違憲だから反対」という『違憲』という基準がゆらぐことになってしまう。
どこからが違憲か?という点ですね。
いずれにしてもこういった議論に白黒がつかないまま成立してしまった安保法案。
今後も、反対派の主張が簡単にやむことはないでしょうね。
安保法案に対する反対派の動きや違憲訴訟など
では、成立してしまった安保法案に、反対派からは今後どのような動きがみられるのでしょうか。
まず、既に話に上がっているのが「集団違憲訴訟」です。
山中光茂・三重県松阪市長が結成した市民団体「ピースウィング」が、この法律が憲法9条に違反していて、平和に暮らす権利が損なわれるとして、国に賠償を求めるそうです。
1万人規模の原告団を目指し、弁護団長には同じく反対派で、法案を批判してきた弁護士の小林節・慶応大名誉教授が就任する予定とのこと。
ただ、気になるのは、「この違憲訴訟でどうなるか?」ですよね。
実際に、違憲訴訟で、過去に、裁判所が法令を違憲と判断した例があります。
ただし!
これまでの最高裁の判決などを見ると、例え違憲であると判断されても、「違憲状態」という留保する判断を下し、法令自体の無効化は強制されないと思われます。
その後、反対派の動きは前述の小林節が「裁判の狙い」について話した言葉から分かります。
「違憲であることを訴え続け、来年の参院選、数年後の衆院選に勝利して、安保関連法を廃止する。
控訴審あたりで衆院選になるから、弁護団で会見を繰り返して、国民に問題を思い出させるのです」
(「週刊朝日」より)
簡単に言えば、問題定義をして、次の選挙で政権を奪取して、法案を廃止しようということです。
ただ、その場合、野党のどこが政権を獲るのか。
ある意味、自民党による強行採決が可能となる素地を作ったとも言える民主党が選ばれることは考えにくいですし、とは言え、その他の政党に可能か・・・?
現実的には、野党が結集しても政権交代は難しいかもしれません。
いずれにしても、まずはこれから確実に起こるだろう違憲訴訟の流れを。
そして、それに対して、政界がどう反応していくか?
それを見て、しっかりと見ていく必要があると感じられます。
安保法案の諸外国の反応
国内の動きを見てきましたが、諸外国ではどのような反応があったのでしょうか?
実は、日本の報道では、「安保法案=悪」みたいに見られていますが、世界的には概ね好意的に受け取られています。
歓迎する反応を見せる国々
アメリカ
国務省、国防総省の報道担当が
「新たな安保関連法などに反映された同盟の強化と地域と国際的な安全保障により積極的な役割を果たそうとする日本の努力を歓迎する」
とコメントしています。
イギリス
ハモンド外相は
「日本が国際的な平和と安全保障の分野で、より大きな役割を担うことを可能にする法律が議会で可決されたことを祝福する」
と歓迎しています。
ドイツ
「ドイツ国際政治安全保障研究所」のマルクス・カイム研究員は
「国連の機能不全を考慮すれば、国際社会でより大きな責任を負うことに積極的な国が増えるのは歓迎すべきことだ」
とコメントしています。
その他、アジア太平洋諸国
歓迎している国の反応は以下の通りです。
<オーストラリア>
「日本との安保協力を促進することはオーストラリアの優先事項」
(オーストラリア ビショップ外相)
<インドネシア>
「日本とよい意味で行動を共にすることができると確信している」
(インドネシア外務省アルマナタ報道官)
<シンガポール>
「(軍事的圧力を強める)中国に対抗するのを支援」
(シンガポール紙)
<フィリピン>
「歓迎する」
(フィリピン デルロサリオ外相)
<ベトナム>
「地域と世界の平和と安定、繁栄のため、日本の積極的な役割を歓迎している」
(ベトナム外交学院戦略研究所のチャン・ヴィエト・タイ副所長)
もちろんこれらの意見が、各国の総意を示すものではないかもしれませんが、傾向を把握する一つの材料とはなるのではないでしょうか。
否定的な反応を示す国
一方、安保法案に否定的な意見をしているのが中国。
例えば、中国は外務省の洪磊報道官が
「日本の最近の軍事力強化や、軍事・安保政策の大幅な変更は、平和・発展・協力という時代の流れに相いれないものだ」
と批判しています。
あるいは、
「日本が専守防衛政策と戦後の平和発展の道を放棄するのかという疑念を国際社会に引き起こしている」
とも発言しています。
こういう発言を聞くと、
「では、中国の軍備増強は?南シナ海やウイグル地区の現状は「平和・発展・協力」という時代の流れに合っていると言えるのだろうか・・・」
という気もしますが・・・。
また、韓国も歓迎はしておらず、韓国外務省が
「日本政府が戦後一貫して維持してきた平和憲法の精神を堅持しながら地域の平和と安定に寄与する方向で、透明度をもって推進していく必要がある」
とコメントしています。
まとめ
以上のように、紆余曲折あった安全保障関連法が成立しました。
諸外国にも、概ね、歓迎されていますが、まだまだ動きもありそうですので、しっかりと注目していきましょう。
以上「安全保障関連法成立に諸外国の反応は?国内では安保法案反対派が違憲訴訟へ」をお送りしました。
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